「余白を広げる」をミッションに掲げ、2023年12月2日に本屋、Lounge B booksを始めた。
今日でちょうど一年になる。
なにかと忙しない日常のなかで、ささやかでもいいから自分にとって大事な時間を過ごす人が増えたらうれしい、それが本であればなおうれしい、地方の片隅から広がる余白を思い描き本屋を営んでいる。
ところが実際は毎月やってくる支払期限に追われていて、余白は広がるどころか、そんなものはどこにあるのか教えてほしいと嘆きたくもなるというのが一年、本屋を運営してみての率直な感想でもある。
それでも自分なりの手ごたえを感じてもいる。
店に足を運んでくれているお客さんは増えているし、本に関するイベントにも呼んでいただけたりしてい、本屋を名乗る躊躇いもなくなってきた。
思い描く理想にはほど遠いが、一年やればやっただけの汗はかいたように思う。
この一年、ひたすら畑を耕していた。
出版・書店業界という未開の地に足を踏み入れたのはいいものの、作物をどうやって育てていけばいいのかさっぱりわからない。
見よう見まねでやろうにも、隣の畑と我が畑では何かがずいぶん違うように思えて、なにも実りそうにない。
だとすればまずは土壌を肥やしてみるしかない。
土を掘り起こしては空気を入れ、ひとかきひとかき鍬を入れてきた。
晴耕雨読。
ときおり本を読みつつ、せっせと耕してきた甲斐もあって、少しは土もふかふかになったのではないだろうか。
道行く人も、ああここは畑だったのかと気づいてくれるようになった。
種こそ蒔いていないものの、気づけばぽつりと出て来た小さな芽もある。
いい作物の作るには、いい土を。
本屋を始めるにあたって、最初からわかってはいたものの決して楽な道ではない。
しかし思っていたよりも広大な、本を通じて広がる世界も知ってしまった。
自分なりのやりかたで道を模索していく。
ひとかきひとかき、一歩一歩、ゆっくりでも歩みをとめずに。
今日から二年目。
今年は種を蒔きたい。
2024年12月2日
Lounge B books
桐谷明宗