2025年10月、唐突にあることを思いついた。
「新潮文庫の100冊」を読もう。
話は20年以上も前に遡る。
退屈を埋めるように小説を読み漁っていた中学時代、夏の文庫フェアの存在を知った。
当時の自分にとって馴染みの深かった新潮文庫の冊子を本屋でもらい、持ち帰った。
ラインナップのなかにはすでに読んだことのあるものが混じているのもよかった。
これを全部読むのもいいじゃないか。
夏休みの宿題よりもよっぽど意義がありそうだと思った。
いや、今振り返ってそう思っているだけで、当時はそんなこと思ってなかったかもしれない。
未読のものを順番に読んでいこうとしたが、お金がなくて入手が難しそうだったので主な購入先はブックオフになった。
100冊(実際は120冊くらいあったように記憶している)のラインナップとブックオフの在庫と価格を考慮し、買えそうなものから読んでいくことにした。
読んだ作品を索引に黄色いマーカーで塗っていくのが気持ちよく、本を読むことに付随する楽しみがあることを知ったのもこの時期だったのかもしれない。
しかし、進めて行くうちに、入手できる本が限られてきた。
2000年前後のブックオフがいかに良かったといえど、「新潮文庫の100冊」をコンプリートできるほどではかなったのだろう。
「新潮文庫の100冊」プロジェクトは尻切れとんぼとなった。
2025年の10月に話を戻す。
本屋の店主となっていた私は、今なら「新潮文庫の100冊」を手に入れることもそう困難なことではないし、読破もできるのではないかと、再びチャレンジしようと思い至ったのである。
ところが。
まだまだ残暑の10月とはいえ、店頭に「新潮文庫の100冊」冊子がない。
何軒か本屋をジプシーしてみたものの、もうどこにも置いていないことを悟った。
途方に暮れた私はH氏を頼ることにした。
H氏は某書店で仕入れを担当している。
どこかの店舗のどこかのバックヤードに1部くらい転がってはないだろうかと。
数日後、H氏はおならのスタンプと共に、冊子が残っていた旨のLINEをくれた。
さらに数日後、H氏より冊子を受け取り「新潮文庫の100冊」読破チャレンジがはじまった。
結果から言うとチャレンジは失敗。
ペースをうまく作ることができず、ラインナップのなかからは一冊も読むことなく2026年の夏に至り、今年の夏のフェアが始まってしまった。
今年で50周年らしい。
新潮文庫の100冊 2026年版
気持ちをあらたに2026年版の「新潮文庫100冊」を手に入れ、リストを作成した。
掲載順でエクセルシートに記載し、番号を振る。
くじ引きツールを使い、最初の1冊は有吉佐和子『悪女について』に決まった。
『悪女について』
数日前に購入した『悪女について』を読み始める。
スキャンダルによる死を遂げた女性実業家が主人公で、関係のあった人たちへのインタビューによって構成されている。
27人の証言によって主人公、富小路公子の姿を浮かび上がらせる形式は、不在の中心、あるいは羅生門形式とも言えるだろう。
有吉佐和子の小説を読むのは初めて。


