朝、雨が降ったせいか涼しい。
天気の話から入る日常会話は、意味をなさなかったりすることがほとんどで、特に「暑いね」はもう何も言っていないのとおなじようなものだ。
それは暑い日が続くからにほかならず、かといって、暑くない日はない日で、「暑いね」が「今日は涼しいね」に変わるだけなので、情報の質・量ともに乏しい。
まさに当たりさわりのない話題だろう。
しかし日記において天気の情報は、その一日の固有性を担保する重要な情報になり得るのだなと気づいた。
あとから見返したときに、そうかこの日は暑かったのかと振り返ることができる。
では、だったら、どう暑かったのかとさらなる具体性が求められよう。
朝、雨が降ったせいか涼しい。昨日よりも。
一言足すだけで、その日は昨日より涼しかったことになる。
ここ数日のぶり返した猛暑を思えば、比較などせずとも、涼しいと書きたくなるくらいに涼しいわけではあるのだけれども。
くどいようだが、それは今だからわかることだ。
いつかの未来のだれかに向けて、この日がスポット的に涼しかったことを残しているのだ。
アイドルグループのメンバーに未来人がいる設定の町屋良平『IDOL』を、そんなことを考えながら読んでいる。


